国際映画祭対決はカンヌの勝利――。第97回米アカデミー賞は昨年のカンヌで最高賞パルムドールを取った「ANORA アノーラ」が作品賞など5部門を制した。昨年のベネチアで銀獅子賞(監督賞)の「ブルータリスト」も主演男優賞など3部門を獲得。米アカデミー賞と欧州の映画祭のテイストが、このところどんどん接近している。
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今年の授賞式の目玉は、「エミリア・ペレス」のカルラ・ソフィア・ガスコンになるはずだった。裏社会を牛耳るボスが性別適合手術を受け、女性として新しい人生を歩み始める物語。演じたガスコンはトランスジェンダーの女性として初の主演女優賞候補になった。
ところが、彼女が過去にSNS上で人種や宗教に対する差別発言をしていたことが明るみに出た。彼女自身の受賞可能性が限りなくゼロになっただけでなく、作品自体の評価も一気に下げてしまった。ガスコンは授賞式に出席したものの、テレビ中継にもほとんど映らなかった。一緒にカンヌの女優賞を受け、今回助演女優賞を受賞したゾーイ・サルダナのスピーチにもガスコンの名前はなかった。
「インディー映画を認めてくれた」
今年の主演女優賞は「カンヌ…